漆の製作工程とお手入れについて

ディスペンサーができるまで

以下の流れで作られています。

①焼き付け
②中塗り
③拭き上げ
④上塗り(無地はこれで完成)
⑤蒔絵~上絵
⑥艶出し(完成) 

 

①漆の不思議「焼付け(やきつけ)」
 
樹液である漆を硬化させる方法は二つあります。
一つは温度20℃~25℃、湿度約50%~70%の環境下で約24時間程で自然と硬化していきます。
二つ目は温度270℃〜300℃の炎で焼くことで数分で硬化させることができます。
楚楚(sosso)の商品は二つ目の性質を利用しています。

この技法を『焼き付け』と呼び、戦国時代の鎧や兜の一部にも使用されており、蒔絵を描かれたものも存在しています。
今回使用しているディスペンサーはステンレス製であるため、最も適した技法であることを時代が証明してくれています。



②中塗り(なかぬり)~③拭き上げ(ふきあげ)

焼き付けによる下地が完成した後、表面を紙ヤスリでならし、漆を塗って乾燥させる『中塗り』という工程を行います。
中塗りは約3〜4回、繰り返して行います。

その後、塗った漆の表面の凹凸をなくすとともに表面の油分を取り除く『拭き上げ』という工程に入ります。
拭き上げは現在では貴重な桐の炭を使って表面を研ぎます。
油分が表面に残ってしまうと漆をはじいてしまう為、次の工程のためにしっかり取り除きます。

『中塗り』と『拭き上げ』、この2つのは商品のベースを作る上で最も大切な工程です。


④「上塗り(うわぬり)」

拭き上げの後、完成時の色を決定する工程、「上塗り」になります。
輪島の上塗りは漆を厚く塗るため刷毛目がなくきれいに仕上がるのが特徴です。
この作業中は塵一つ落としてはならない繊細な工程で、艶やかな仕上がりに繋がります。

⑤最後の化粧「蒔絵(まきえ)」

世界に日本だけと言われる技術「蒔絵」。直径0.003ミリの、金銀を使用しています。蒔絵もいくつもの工程に分かれており、それを詳しく説明していこうと思います。

『粉蒔き(ふんまき)』

「蒔絵(まきえ)」とは漆で「絵」を描き、その絵に金粉や銀粉を「蒔く」技法であることが由来となっています。
金粉や銀粉を蒔くことを『粉蒔き』と言います。
粉筒(ふんづつ)と呼ばれる道具の中に粉を入れてから指ではじきながら絵に粉を落とし、余分な粉を筆ではらいます。
数多ある材料の中から絵のデザインに合う粉を選ぶことも製作する上で大切な作業となります。
『塗り込み(ぬりこみ)』
鈖を蒔いた部分を漆を使って上から塗り固めます。

 

『研ぎ(とぎ)』

塗り込みの漆が乾いたら駿河炭(するがすみ)と呼ばれる桐の炭やサンドペーパーで研いでいきます。鈖自体がとても小さいため、鈖が一番輝く箇所で研ぎを止めるのが非常に難しいところです。

『上絵(うわえ)』

上絵は蒔絵の最終段階であり、芯となる部分を加える工程になります。
筆先がとても長いことが特徴である『蒔絵筆』の先端部分に圧をかけながら線を引きます。
楚楚(sosso)で扱っている商品では桜蒔絵の蕊(しべ)や雪華蒔絵の中央線になります。
この工程により蒔絵がより引き締まった仕上がりになります。

そして最後に艶出しで完成します。

全ての過程で4ヶ月~5ヶ月かけます。
正倉院の時代から蒔絵が始まって1500年、その強さも時代が語ってくれています。
最後に、漆は水分が大好きです。これらの作品たちは水周り、テーブルの上を美しく彩ってくれることでしょう。そして、極めて実用的なのです。

年齢を問わず使って楽しく、美しさを実感してもらえると信じています。

 

お手入れ、修理について

漆は作品として完成した後も、湿気により硬化を続けます。丁寧に使い年月が経てば、深み、艶、強度が増していきます。漆は酸やアルカリ、油分、アルコールに耐性があり劣化しにくいです。手垢や他の汚れが気になる際は中性洗剤を使い柔らかいスポンジで優しく洗ってください。

注意点として、漆は太陽光などの紫外線によって劣化しやすいです。長時間日光に当てると艶がなくなる可能性がありますのでご注意ください。

傷がついたり、艶がなくなった場合、補修・塗り直しが可能です(商品状況によっては有償になります)。サイトのお問合せフォームからご連絡ください。

他、疑問点あればお問合せにお気軽にご連絡くださいませ。